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命日を追悼して。
1989年没だから奇しくも享年58、還暦という壁の大きさにあらためて身が竦む。
語彙の豊穣、緻密に練り上げられた文体。
この人の文章を読むたびに、日本語という言語の豊かさ、そして作家という人種の凄さを思い知らされる。
どういう修練をすれば、こんな文章が書けるようになるのだろうかと、やや絶望的に。
PLAYBOYに連載された開高健による釣紀行は、このアマゾン編が第一作。次々に発刊された続編群はある種のマニエリスムに陥ってしまったが、この作品は何回読み返しても、瑞々しく新鮮だ。
「いまだに土堤も、橋も、ダムもない、地上唯一の、そして最後の大河」アマゾンを目の当たりにした作家の高揚が、リアルに伝わってくる。「オーパ!」というのは、彼の心の叫びだったに違いない。
ベトナムのジャングルを経て、彼が発見した「輝ける闇」は、きっと南米のジャングルだったのだ。
彼の旅は、妻からの脱出だったと、死後に暴露されている。
旅が男のロマンだというのは、即ちそういうことなのだ。
遺作は『珠玉』。
合掌。